SANYO 2SC2362K は三洋が開発した、高耐圧低雑音小信号シリコントランジスタ、NPN型。SANYO 2SA1016K とコンプリペア。
無印版の 2SC2362/2SA1016 が Vceo ≦ 100V なのに対し、Kが付くと Vceo ≦ 120V となる。ライバルは NEC 2SC1845。
hFE ランクは、F(160-320)、G(280-560)、H(480-960) の 3ランク。
三洋半導体は親会社の三洋電機がパナソニックに合流する際に部門ごと放出となり、米国の On Semiconductor(オンセミ)が買収した。2011年の買収時点では、現行品で製造されていた。2023年現在は生産終了品になっている。三洋半導体の前工程製造子会社だった三洋半導体製造株式会社(元新潟三洋電子)はオンセミ新潟となったあと、2022年にスピンアウトして JSファンダリとなった。本品種を含めて、オンセミ新潟で製造していた品種は廃品種となったが、JSファンダリの IP として継承されていれば、再生産される可能性がある。2023年からサンケン電子が JSファンダリ内でパワー半導体を製造する。
Onsemi の廃品種については、Rochester Electronics(米国)という会社が保守用として在庫している。一部品種についてはメーカからダイで仕入れており、オーダーごとにパッケイジングして製造、販売している。いわゆるセカンドソース品とは違い、オリジナルのダイを使うので性能などの点で遜色はない。1品目1オーダー$250~ で少量でも受けている。2023年現在、2SC2362KG-AA なら単価$0.16/個(@1,600)。
本品種はセカンドソース品が無いので、代替品は Onsemi KSC1845 などになる。
TO-92形状。hFE が低い、Fランク(160-320)。
同一ロット品からサンプルを 5個、適当に抽出して hFE を測定したもの。Ic = 1.0mAの際の数値で、261、283、288、274、273 とほぼバラつきなし。測定条件は Vce = 6.0V。
以下の特性は、hFE : 261 の個体を計測。
Vce-Ic特性。データシートに記載されたものと同じく、能動領域では Vce依存が少なく、横一直線に伸びている。Ic間も一定で、Ib依存が少ない。測定条件は Vcc = 12.0V。
アーリー電圧(VA) は約200V。
飽和領域のVce-Ic特性。Vceo ≦ 120V という高耐圧の品種のため、能動領域は Vce ≧ 3V くらいからといった感じで、低電圧領域では右肩上がりになる。
サンプル5個(hFE測定と同じ個体)の Vbe-Ic特性。測定条件は Vce = 6.0V。
本品種は低雑音を特徴とする。超低雑音をうたった低圧の品種、2SC1570(2SC536N の改良品) にほぼ匹敵する雑音特性。他社製の似たような耐圧の代表的な低雑音品種、TOSHIBA 2SC2240 とデータシートに記載されている NF特性を比較してみる。表示が消えてしまっているが、縦軸の単位は kΩ。測定条件は、Vce : 6V、f : 1kHz。
両者のデータシートに記載されている NF の中から、1dB の線で比較してみる。黒が SANYO 2SC2362K、青が TOSHIBA 2SC2240。NF = 1dB となるのは、Rg : 10k のとき、2SC2362K が 0.005mA と 0.6mA、2SC2240 が 0.01mA と1mA。Rg : 2k のとき、2SC2362K が 0.06mA と 0.7mA、2SC2240 が 0.025mA と 3.5mA と読み取れる。
両者を比較すると、2SC2362K のほうが、2SC2240 に比べて、高インピーダンス、低電流での雑音特性が低い傾向がわかる。
(続く)