負電源を使わない FUZZ では回路の配線を工夫することで使用することが常識だった負電源を不要とした。
要点だけまとめれば、2つのカップリングコンデンサに挟まれた回路の DC電位は任意に設定することができ、プラス側でアースしようが、マイナス側でアースしようが、回路としてはどちらも同じ。それならマイナス側でアースしてしまえば、負電源が消える、という仕組みだった。
このアイデアがさらに進化することで、カップリングコンデンサを消せるのではというアイデアも思いつく。
まずは出力側から考える。この回路の動作を端折って説明すれば、Q1 によって制御された電流で R2 に発生した信号を、VR1 によってレベルを調整して取り出している。要は、R2 で発生する信号を取り出せればいいのである。
ここで C3 が必要とされているのは、R2 は無信号の状態でも電流が流れており、電圧が発生する。これは信号によって変化しない DC成分なのでそのまま出力するのは望ましくなく、カットする必要がある。
よって、VR1 を R2 と対アースで取り出そうとするので DC成分が載ってくるのであり、R2 で発生する DC と同電位との間で取り出せば、カップリングコンデンサは不要にできそうである。
これは概念としてアイデアを回路図に落とし込んだもので、実働する回路ではない。無信号の際に R2 に発生する電位を測定しておき、これと全く同電位となるよう、R3 と定電流源 I1 が用意できれば、R2 と R3 の間の DC電位はゼロとなり、カップリングコンデンサが不要となる。この歳、アウトプットのスリーブ側の電位は R3 に発生する DC電圧分、オフセットしているのでアースに落とすことができない。
アイデアとしては成立するものの、実際にこの回路を組んでも思ったように動作しない。まず、Q1 は温度など様々な要因によって動作点が変化するため、R2 を流れる電流が変化、R2 に発生する DC電位も変化する。この現象をドリフトという。
定電流源である I1 も理想的に動作するデバイスを用意できるとは限らないため、やはりここでも R3 で発生する電位にドリフトが発生する。
要は I1 は Q1 に追従するような定電流回路とする必要がある。
これは単純に Q1 と同じデバイス、Q2 を用意すればよい。もちろん、厳密にドリフトを消すことはできないが、温度変化は概ね比例するので実用になる回路は組めるだろう。調整のため、R3 か R4 はポテンショメータと組み合わせたい。電流が流れないことを考えると、R4 を置き換えたほうが良さそうだ。
配線がゴチャゴチャしていて見づらいが、入力だって対アースではなく、Q2 のベースへ持ってきてしまえば、Q1 と Q2 の DC電位は同じなので、これで入力のカップリングコンデンサ C2 も消すことができる。
配線も引き直してしまったので別の回路に見えると思うが、先ほどの回路の Q1、Q2 のエミッタを +9V へ接続せずに、定電流源を介してから接続する。Q3、R5、R6、D1 の組み合わせで定電流源となる。
これは典型的な差動増幅回路であり、先ほどまでは R3 の電位を生むためだけの単なる定電圧回路でしかなかった Q2 も増幅に参加させることができる。
もっと工夫するなら、いま、電源のマイナス側をアースとし、インプット、アウトプットがフローティングしてしまっているが、アースに落とすのであれば電源よりインプットなどを優先したい。電源をフローティングとし、インプットの S(スリーブ) をアースしたほうがノイズには強くなりそうだ。
ここまで書いておいて、たぶんこの回路は実用上のメリットがない。たった 2個のカップリングコンデンサを消す代わりに、多くのデバイスを追加で必要とする。要はカップリングコンデンサを使うということは、この複雑な回路を構成する多くのパーツを不要とし、メリットが大きいことがわかる。
思考実験としてアイデアを回路に落とし込んでみた。
以上。