SANYO 2SC536

SANYO 2SC536 は 1960年代に三洋が開発した、同社初の汎用小信号シリコントランジスタ。エピタキァルプレーナ形、NPN型。SANYO 2SA608 とコンプリペア。

登場後、製造プロセスの改善などでスペックアップしていくが、この型式は汎用品種として廃盤にならずに使われ続けたので、同じ型式で複数のスペックのものが存在する。形状が変わっても同じ型式のままなので、非常に種類が多い。-NP が三洋NP型(2003A、TO-92) で Pc : 400mW、-SPA が三洋SPA型(2033、TO-92小型) で Pc : 200mW。-KNP は Vceo : 50V。

三洋半導体は親会社の三洋電機がパナソニックに合流する際に部門ごと放出となり、米国の On Semiconductor(オンセミ)が買収した。Onsemi買収後は、Onsemi の品種として製造、販売が続けられたが 2023年現在は生産終了品になっている。三洋半導体の前工程製造子会社だった三洋半導体製造株式会社(元新潟三洋電子)はオンセミ新潟となったあと、2022年にスピンアウトして JSファンダリとなった。本品種を含めて、オンセミ新潟で製造していた品種は廃品種となったが、JSファンダリの IP として継承されていれば、再生産される可能性がある。2023年からサンケン電子が JSファンダリ内でパワー半導体を製造する。

本品種を低ノイズ改良したのが 2SC1570。高耐圧版である 2SC536K の後継機種は 2SC3330(TO-92S) / 2SC3331(TO-92) だが、こちらも廃品種。FBETプロセスで製造したものが 2SC3382(低雑音版)、2SC3383

Onsemi の廃品種については、Rochester Electronics(米国)という会社が保守用として在庫している。一部品種についてはメーカからダイで仕入れており、オーダーごとにパッケイジングして製造、販売している。いわゆるセカンドソース品とは違い、オリジナルのダイを使うので性能などの点で遜色はない。1品目1オーダー$250~ で少量でも受けている。2023年現在、2SC536E-SPA なら単価$0.23/個(@1,000)。





三洋の低電圧汎用品種




三洋の低電圧トランジスタの系譜




三洋/Onsemi 2SC536-E。マーキングは 536 / E OJ。SC-72サイズ(TO-92S)

写真のものは、2023年に共立エレショップで購入したもの。汎用品種のため、長らく TO-92 のものが出回っているが、これは Onsemi時代に製造されたもので、TO-92 より小型の、SC-72(TO-92S) の形状になっている。hFE が低い、Eランク(100-200)。





三洋/Onsemi 2SC536-E。Ic-hFE特性

同一ロット品からサンプルを 5個、適当に抽出して hFE を測定したもの。Ic = 1.0mAの際の数値で、158、179、124、163、181 とバラつきがあり、用途によっては選別が必要。測定条件は Vce = 6.0V。

以下の特性は、hFE : 158 の個体を計測。





三洋/Onsemi 2SC536-E。Vce-Ic特性

Vce-Ic特性。データシートに記載されたものと同じく、能動領域では Vce依存が少なく、横一直線に伸びている。Ic間も一定で、Ib依存が少ない。ROHM 2SC1740 に匹敵する特性。測定条件は Vcc = 7.0V。

アーリー電圧(VA) は約148V。





三洋/Onsemi 2SC536-E。Vce-Ic特性(飽和領域)

飽和領域のVce-Ic特性。こちらも申し分ない特性。





三洋/Onsemi 2SC536-E。Vbe-Ic特性

サンプル5個(hFE測定と同じ個体)の Vbe-Ic特性。ハズれ個体(hFE : 124)は、Ic も少ない。測定条件は Vce = 6.0V。

小信号トランジスタ

(続く)