TOSHIBA 2SC2240 は東芝の汎用小信号シリコントランジスタ。エピタキシャル構造(PCT方式)、NPN型。TOSHIBA 2SA970 とコンプリペア。
定番の汎用品種、TOSHIBA 2SC1815 と較べて耐圧が高くなり、低雑音を特徴とした品種。形状は TO-92。hFE ランクは、-GR(200-400) と -BL(350-700) のみ。ライバルは NEC 2SC1845。
データシートでは低周波低雑音用の品種とし、fT も 100MHz と同クラスでは控えめだが、実際には fT は測定条件が厳しい(Ic = 1.0mA。他社は 10mA時のものが多い)もので、実際には軽い RF領域でも使用でき、データシートからは読み取りにくいものの定格いっぱいまで電圧をかけてしまうなど、アマチュアが電子工作で使っても壊れにくいこと、他社品だと 3~4ランクに分かれる hFE区別が、実質2段階(-GR、-BL)しかないなど、使いやすさが評価されて、アマチュア工作では重宝される。このクラスには横綱 NEC 2SC1845 があったため、NEC 2SC945 を置き換えた TOSHIBA 2SC1815 に比べると存在感は薄い。高圧品種であるものの、価格面で 2SC1815 の 3倍程度と高級品だったため、必要な箇所だけ使われるといった品種で、汎用品種と言って良いかは微妙。
データシートに記載はないが、本品種は高耐圧のため、ノイズ源となる rbb'(ベース広がり抵抗) が約30オームもある。本品種より低雑音をうたう TOSHIBA 2SC3329(Vceo ≦ 80V) は約2オーム、HITACHI 2SC2546(Vceo ≦ 90V) は約12~13.5オームとされる。オーディオ回路に使うと rbb' が小さい品種のほうが音質が良くなる傾向があるので、耐圧が必要ない回路であれば、本品種を使わないほうがいいかもしれない。
2010年ころに、他の TO-92 の品種と同じく、新規設計非推奨品(NRND)に指定された。2011年秋のタイ洪水がキッカケで、東芝セミコンダクタ・タイ社のパトゥムターニー県バーンカディー工業団地にあったディスクリート半導体工場のラインが復旧不可能となり(2013年にプラーチーンブリー県に拡大移転)、そのまま 2012年に廃品種となった。廃品時点での価格は 1,800円/200個(秋月)程度。
廃品種になっても、汎用品として普及していたので流通在庫は相当残っており、少しずつ値上がりしたものの、2023年現在も入手自体はできる。これといってセカンドソース品はない。
型式は違うが、KEC(韓国) の 2SC3200 / KTC3200 は東芝のライセンス生産品で中身は同じ。KEC こと韓国電子は、元々韓国東芝という東芝の現地子会社で、日本で生産しなくなった品種の生産ラインを移設して製造していた。ただし、こちらも廃品種な上に定番品ではないのでむしろ入手難。
TOSHIBA 2SC2459 はサイズが小さく(TO-92S)、Pc : 200mW と定格が異なるほかは同じモノ。KEC版が 2SC3201 / KTC3201。サイズが小さいため、大量生産のメーカ品では重宝され、むしろメーカ製品の基盤では 2SC2240 より見かける頻度が高い。(これは他の TO-92、TO-92S がある多品種でも同じ傾向)
汎用品種だったので、現役当時は 200個入り、500個入りなどで売られていた。写真の袋は 2010年代前半に購入したもの。2000年4月製造(2010年4月の可能性もある)。
TO-92 形状。マーキングは印刷。hFE はメジャーだった、GRランク(200-400)。
同一ロット品からサンプルを 5個、適当に抽出して hFE を測定したもの。Ic = 1.0mA付近の数値で、261、348、286、323、308 とそれなりにバラつきあり。測定条件は Vce = 6.0V。
以下の特性は、hFE : 261 の個体を計測。
Vce-Ic特性。低電流、能動領域では Vce依存が少なく、横一直線に伸びている。Ic間も一定で、Ib依存が少ない。測定条件は Vcc = 6.0V。
アーリー電圧(VA) は約318V(?)。※数値が大きすぎるため、測定ミスの可能性あり
飽和領域のVce-Ic特性。こちらも申し分のないキレイな特性。
サンプル5個(hFE測定と同じ個体)の Vbe-Ic特性。測定条件は Vce = 6.0V。
(続く)