EL34PPアンプの製作

ECC83/12AX7 の選択

これは球から選択するというより,出力管のドライブに必要な回路を設計し,それにあった球を選択します.私の場合,前段であまり奇抜な事はせず,入手製に優れた球から選択するよう心がけています.入手製のよい球は性能の割に価格が安く,また様々なブランドが選べるため比較して楽しむ事も出来ます.また,実際に多用されているという事は,様々な理由で優れている他なりません.

オーディオ用双3極管として有名なのはECC82/12AU7ですが,オーディオ用ではありませんがECC81/12AT7という球があります.また,汎用(とは言っても,オーディオ用途)双3極管ECC83/12AX7と併せてこの3つは,3兄弟のように使え,用途に合わせて選択する事で,どのような回路にも適す事が出来ます.実際には,ECC81/12AT7はオーディオ用ではないため,直線性が悪く,S/Nの点でも他の2つに劣るのですが,ECC82/12AU7でもECC83/12AX7でも合わないようなポジションでは貴重な球です.なお,ECC83/12AX7μが高い代わりに内部抵抗が高く,バイアスも浅いので,低レベル信号の入力以外では使いにくいのですが,今回の場合,まさに入力部ですし,次段の位相反転段はP-K分割型にするため,内部抵抗の高低は問題になりません.ツボにはまった選択といえるでしょう.なお,増幅は出力段を除くと,この初段のみですから,ゲインの点からもECC83/12AX7の高μは適当といえます.しかし,この選択は出力段としてEL34/6CA7を選択したから可能とも言えます.EL34/6CA7は近代管だけあり,その性能は抜群でグリッド電流が流れる事はまず無いと考えていいです.また,今回は様々な理由から自己バイアス方式としました.こうなると,出力段のグリッド抵抗は最大で1MΩを使う事も出来ます.また,バイアスも浅い球なので,スイング電圧も必要ありません.これらの事から,ドライブ段の苦労は皆無に近いといえ,それにつれ初段の苦労も無いのです.

ECC83/12AX7を使用する際の注意点として,電源電圧は高く掛けることです.この球は耐圧が300Vですが,限界ギリギリは怖いとしても,8割強の250Vは掛けたいところです.100Vでも250Vでも動作し,特性も似ている優秀な球ですが,音は全く異なります.ECC83/12AX7は高内部抵抗なので使用電流は少なく,また幸いにして,EL34/6CA7のプッシュプルでは慣習的に400Vを掛けるので,250Vを得るのは抵抗による電圧抵抗だけで作れて簡単です.使用上の注意点としては,球を替える度,そのIpによって電源電圧が変わってしまうため,調整が必要になるのですが,ブリーダ電流を流す設計もありです.ブリーダといっても,前述使用電流が少ないため,その増加は微々たるものです.出力段のバラつき以下と言っても過言ではないでしょう.

このコンテンツは 2003年に別のサイトに掲載したものを転載しています。