ECC82-5687プリアンプの製作

なんちゃって佐久間アンプのEL34トランス結合ドライブEL34シングルアンプを聴いているとやっぱり気になるのはプリアンプ。佐久間アンプはシステム全体でコーディネートしなくてはいけない。パワーアンプだけ作って既存のシステムへ組み込んでもその真価はわからない。

佐久間アンプ流プリアンプはモノーラル用MCカートリッジ、DENON DL-102 がターゲットになる。DL-102 は 2.5mV という高電圧でモノーラル信号が出力されるカートリッジで、これを CRイコライザ形式のフォノアンプで昇圧する。

初段には RCA5691 を用いるのが定石だ。定番の双三極管6SL7-GT と似た特性でヒータが 6.3V/0.6A と少し大きい。ミューが 70 ほど取れるハイミュー管で 12AX7 が普及するまでは高利得が必要な回路で定番だった球だ。

佐久間アンプ流プリアンプでは RCA5691 はほぼ定位置でイコライザ回路を経た後に出力管でさらに増幅しスピーカをドライブできるマッチングトランスを介して 16Ω~600Ω で出力する。

佐久間駿(ススム)氏は長年、DL-102 のモノーラルシステムを突き詰めてきた。しかし一時期、ステレオカートリッジに食指が動いたことがある。MJ無線と実験2001年1月号に掲載されたシェルター製ステレオMCカートリッジ Model 901 のために作った「5692/CV5112シングルプリアンプ」である。

出力が 0.5mV と DL-102 に比べて幾分少ない上に、インピーダンスが低いこのカートリッジに合わせるため、初段に定番の 5691 を採用せず、タムラTKS27(150:100K、昇圧比1:25.8)で受けて RCA5692 で増幅するという手法を取っている。

その後の回路はなんら変哲ないが、次段はゲインを稼ぐ目的で出力管ではない真空管が登場する。CV5112(3A/167M)という超高ミュー管である。しかしこの CV5112 は入手難の球だ。

このアンプ、ひと目で惚れた。音を聴いてみたい。しかし入力トランス、段間トランスだけでステレオ分で 8個、電源トランス、チョークトランスまで含めると合計12個という物量はおいそれとは真似できない。5692 はともかく CV5112 は人気がなさすぎて一般には流通してない。

そこで 5692 を特性の似たポピュラーな双三極管、ECC82(12AU7) で、CV5112 を 5687 で置き換えたアンプを設計してみた。5692 をそのまま MT9管にした 6FQ7、6CG7 という球があるのでこちらを使っても良い。

ECC82(12AU7) の特性は 5692 とほぼ同じなので定数も同じで良いだろう。5687 は CV5112 の替えにはならない。低Rp管を起用するというコンセプトだけ真似してる。5687 はミューが ECC82(12AU7)並に低い。

5687 という球、特性はキレイだがヒーターが 6.3V/900mA と出力管並に大きい。小さな球でヒーターが大きいので発熱もすごい。そして寿命が短い。しかしその特性の良さから人気があって市場でもよく出回っているようだ。

5692/CV5112シングルプリアンプでは 280Vタップを傍熱型整流管WE422A で整流し、20μF/600V、タムラ A4004(10H)、30μF/600V、A4004(10H)、40μF/900V で約330V を得てる。WE422A も高価な整流管で入手は難しいので代替品を使う。規格的には GZ37 だろうが電流はステレオ分合わせても 120mA に満たない程度しかないのでポピュラーな 5V4G で十分だろう。

ヒーターは初段の 12AU7 が 6.3V/300mA or 12.6V/150mA、5687 が 6.3V/900mA or 12.6V/450mA を必要とする。

子曰く、初段のヒーターは左右チャンネルで分離しなさい。5V + 2.3V(6.3-4V) の 7.3V をブリッジ整流し抵抗器で降圧させなさい。と仰る。仰るとおり作ろうにも市販の電源トランスではヒーター巻線が足りない。どうしたものか。

6.3Vrms のトランス巻線をダイオードでブリッジ整流するとダイオードの電圧降下があって 6.3Vdc がかろうじて得られる程度の電圧にしかならない。ダイオードを SBD にすることで、なんとか 7V くらい得られるのではないだろうか、という目論見で 6.3V巻線をそのまま使うことにする。

6.3V巻線を 3回路備えた市販の電源トランスというのはなかなか無い。エイトリックトランスフォーマーの N-150 が 0-2.5V-6.3V 2.5A x 2回路、0-6.3V 1A 1回路を搭載しているので 2.5A で初段12AU7と出力段5687 を片チャンネルずつ点火してはどうだろうか。

チョークは標準品の C-10-120(10H) を 2個で行く。出力トランスは廉価シリーズ PS-101 が 0-3K-5K-7K、0-4-8-16オームとちょうど使いやすい。

5687 の替わりに E182CC(7119)という球が手に入るならこちらを使ったほうがヒーター電力が少なくて済み、内部抵抗が低く、ミューも高い。


※部品のナンバリングが重複してる。ヒータ用コンデンサ、LED用抵抗器に注意。

ここまで設計しておいてなんだがやっぱり 5687 という球が好きになれない。低Rp は魅力的だがミューは低いし性能に対してヒーター電力が多すぎる気がする。巷では評判が良いので決して悪い球では無いのだが、、、

定番球以外の起用も考慮に入れていろいろ探してみるとロシア球で 6S45P という面白い球があった。規格がよくわからなくてプレート定格150V(?)、プレート電流定格52mA、プレート損失7.8W、ヒーターは 6.3V/440mA という三極管らしい。標準的な使用で内部抵抗が 1KΩ以下、ミューが 40~50 になるという超低Rp、超高ミュー管らしい。

軍事用に Sovtek などで作られていたらしく人気もないため NOS に限られるが入手難という球ではない。CV5112 のコンセプトを真似てこの球を起用してみたいと思う。

プレート定格が 150V と真空管としては特異的に低いが、これはプレート損失7.8W から逆算されているのではないかと思う。つまり、150V x 52mA = 7.8W なんだろう。プレート電流を抑えれば、250V くらいは余裕で掛けられると思う。プレート損失を超えないようにするにはプレート電流を 31mA以下にすればよい。余裕を見て 25mA で設計する。

(信用度の低い)規格書によるとグリッドリーク抵抗は 150KΩ以下とする必要があるらしいので注意が必要だ。

6S45P を使った場合で回路図を引き直した。出力段は 6S45P にプレート電流 25mA、プレート電圧 250V を動作点とする。計算では入力トランスで 30dB、ECC82段で 16dB、RIAAイコライザ段で -3dB、6S45P段で 30dB、出力トランスで -25dB、トータルで 50dB前後を目指す。MCカートリッジ用フォノイコライザとしては若干ゲインが足りない。出力トランスをもうひとつ使い、1次側 16Ω、2次側 3KΩ で使えばプラス20dB のゲインが得られる。

ここまでの構想をまとめてエイトリックトランスフォーマーの Fさんに相談する。構成をパッと見て「これはハムとの戦いですね」と言われる。入力トランスとゲインの低い初段。まずは初段だけでも組んでみて様子を見ては如何でしょうか、とアドバイス頂く。確かに誰も作ったことがない回路だからバラックで組んでテストしてみたほうがいいだろう。

整流管も MT管はどうですか、EZ81(6CA4)、EZ80(6X4相当の MT9管)あたりをすすめてもらった。US8ソケットだと種類が豊富にある、ヒーターが 5V で済むというメリットもあるが確かに回路が MT管だけなので整流管も MT管で揃えるのもアリだろう。

6DE7 という複合管を教えてもらった。MT9 で三極管が 2ユニット入っている TV用の球らしい。一つ目のユニットが ECC82(12AU7) の片ユニット相当、もう一つのユニットが内部抵抗 1Kオーム程度のミニ出力管という構成になっている。低内部抵抗は魅力的だがミューは低いのでこれを使うとなると増幅段がもう一段必要になる。(片チャンネルに 2管使って初段を 12AU7相当ユニットパラ、あとは 1ユニットずつ 2段増幅という手もある)

アドバイス頂いたとおり、初段だけバラックで組んでみる。6DE7 は手持ちがないので ECC82(12AU7) と EZ81(6CA4) で回路を組んでみる。

電源トランスの 200Vタップを EZ81(6CA4)で両波整流し、50μF/500V、500Ω、50μF/500V、200Ω、50μF/500V という簡易フィルターで約240Vdc を得た。リプルはほぼ無い。これで ECC82(12AU7) 2ユニットパラ、バイアス-7.1V、プレート電流2ユニット合計2.15mA で動作してみたところプレート電圧 135V、トランスと合わせたゲインは約44dB になった。

ヒーター回路は 6.3V/2A の巻線を Siダイオード(SBD ではない)でブリッジ整流し、合計45,000μF の電解コンデンサで整脈している。

はじめは出力にハムが重畳していたがワイヤリングを直したところ測定できないほど小さくなった。

ここまで組んでみたら音を聴いてみたくなる。手持ちの 3H のチョークを使って RIAAイコライザ段を組み、出力段の 6S45P につないでみる。出力トランスは使わず 6S45P の負荷を抵抗負荷としコンデンサで DCカットして信号を取り出す。

DL-103 を相方とし EL34三極管接続PPアンプにつなぐ。ハービー・ハンコックの「処女航海」、パールマンの「The Itzhak Perlman record」など手元にあった盤を次々聴いていく。驚いた。なにもチューニングしてない、定数もたぶん合ってないだろうバラック回路から音が次々飛んでくる。

もしや、と思いクリフォード・ブラウンの「Study in Brown」、B面を再生する。一曲目、「George's Dillemma」のラッパが飛んでくる。どれだけ飛ばそうとしても飛んでこないラッパが飛んでくる。

聴き慣れてくると中高域が落ち気味なのが気になってくる。低音も出ていないけどそれほど気にならない。佐久間式プリ、只者ではない。佐久間ススム氏の長年の執念がこの定数に込められている。イコライザ段の 3KΩという定数、一般的には 2.7KΩ か 3.3KΩ になる。ピッタリ合わせるなら 3.3KΩ//33KΩ という手がある。佐久間ススム氏はイコライザ段に 5W の金属皮膜抵抗を使ってるがいまの市販品では無いだろう。いまは 3W酸金を使っているんだろうか。0.033μF という定数も無くはないがあまり一般的ではない。この定数を日本ケミコン製のオイルコンで見つけるのは難しいだろう。回路的に見てももっと一般的な 0.022μF で良さそうな気はするが、きっと 0.022μF ではダメなのだろう。0.033μF + 10KΩ(5W)、0.047μF + 3KΩ(5W) が佐久間式RIAAイコライザだ。

5692/CV5112プリアンプでは後に VL-SS として市販されるタップ切り替え式インダクタの試作機が用いられている。この VL-SS、サン・オーディオがタムラ製作所(当時はタムラ精工)に佐久間式プリ用として特注したインダクタで 3つのタップが出てる。それぞれは以前にタムラが作ってた可変インダクタ、VL-208(1.1H~11.0H/350Ω)、VL-209(3H~30H/900Ω)、VL-210(7H~70H/2,100Ω) を一つにまとめたトランスでそれぞれのタップは 08(2.0H/228Ω)、09(5.2H/456Ω)、10(13.6H/869Ω) の仕様になる。外形は 71(W) x 68(D) x 91(H)(端子除く)、ネジ穴は M3 で 52(W) x 48(D)、シャシー穴は 41(W) x 39(W) と平滑用チョークトランス A-4004 と同じになる。色も A-4004 と揃えてある。

チョークを VL-SS に変えてみる。まずは指定の 09タップ、5.2H/DCR456Ω にする。3H(整流用チョークで公称3H なので DC をカットしたクラーフ結合ではもっとインダクタンスは大きいと考えられる)でも若干モッコリ気味だった音がモコモコになってしまう。これは合わない。08タップ、2.0H/DCR228Ω に変える。音が一気に明るくなる。音の重みは無くなってしまうがシャッキリ爽やかサウンドが広がる。

2H では明るすぎ、3H ではモッコリ気味といったところか。

佐久間式プリの RIAAイコライザ段はチョークトランスVL-SS(2.0H/DCR228Ωタップで使われることが多い)と次段グリッドリーク抵抗 250KΩ、次段真空管のグリッド入力容量(約20~100pF)で 10kHz より若干上の周波数に小さなピークを作り、同時にその上の帯域を減衰する。10KΩ と 0.033μF で -6dB/oct で 1KHz弱から上の帯域を減衰する。3KΩ と 0.047μF で 400Hz 前後から上の帯域を減衰する。イコライザ段だけ見ると中高域に向かって信号が減衰するだけに見えるが、入力トランスと初段に仕掛けがある。佐久間式プリの入力トランスとしてよく使われてる TKS-27 は一次側150Ω、二次側100KΩ で設計されているがこの二次側のインピーダンスを無視して初段のグリッドに直接入力している。一次側は MCカートリッジ(モノーラルプリの場合は DL-102)がつながっているので一次側のインピーダンスも整合してない。信号源がローインピーダンスで初段がハイインピーダンスなのでトランスは不整合状態で動作しており高域に若干のピークが生じる。このピークがいい具合にイコライザ段を補正して佐久間式プリの音になる。佐久間式をちょっと試そうと考えてイコライザ段だけ作って自前の回路に組み込んでも同じ音にならない。

TKS-27 の詳細な仕様は公表されてないので分からないが、1次側150Ω が 300mH/DCR2Ω、2次側100KΩ が 200H/DCR1,300Ω くらいだと仮定すると、これが初段RCA5691(5692)パラのグリッドにつながっておりケーブルなどの静電容量を加味した約10~20pF と LCR回路を形成する。1kHz~10kHz のあたりで若干のピークが発生する。

400mm x 300mm x 1.0mm のアルミ板の上に部品を配置し、試作機を作る。1.0mm厚のアルミ板では部品の重みでたわむので 2.0mm厚の L字アングル で適宜補強する。

写真下が前面で、前面の入力端子から信号は背面に向かっていく流れになる。欄外のトランスは右下のものが電源トランスN-150、右上がチョークC-10-120、アルミ板の右上の電解コンとセメント抵抗が見えるユニットがヒータDC点火用整流回路だ。

回路定数などはバラックで組んだ時とほぼ同じだが、出力がトランス結合になるためそれに伴って出力管の負荷が出力トランスになる。手持ちの関係で 5KΩ:16Ωで使用する。

設計よりゲインが少ないので音量は小さいが、ぶっとい音が出る。中音域の押しの強さが目立つが高域のボリュームが少なくて違和感がある。実測すると 6S45P の内部抵抗は 1KΩ以下ということはなさそうで、1.5KΩ くらいはある。

佐久間ススム氏は RIAA回路の定数を耳で聴きながら決めたらしい。ここ数年に製作記事に載った回路ではほぼ同じ定数になっていて、アンプによってはグリッド抵抗250KΩと並列に 0.033μF が挿入されることもある。

ススム氏が耳で決めたなら、それに倣ってうちでも耳で聴きながら定数を決めよう。コテ片手に回路をいじる。

あーでもないこーでもない、と部品をとっかえひっかえする中でオリジナルの回路を見ていてふと気づいた。この回路、高域の減衰が大きすぎるんじゃないか?

3KΩ + 0.047μF のユニットの接続点をチョークの直後ではなく、10KΩ と 0.033μF の間に変えてみる。するとどうだろう。これまで消えてなくなっていた高域が出てくるようになった。ぶっとい音はそのままで。

3KΩ を 10KΩ と 0.047μF の間からチョークの直後に移す。こちらのほうがよい。

まだ若干高域のボリューム不足は否めないが、だいぶバランスはいい。チョークは 3H よりもっと少ないほうがいいかもしれない。

ケースを加工する。奥澤の O-2(400 x 300 x 70mm、t = 1.5mmアルミ)に図面を貼り付け、ポンチを打ってドリルで穴を開ける。金属加工のコツはちゃんと油を注油すること。油は切削用がいいがエンジン用の油(新品のもの)でも良い。アルミは放熱が良いので工具は低速じゃなくてもよい。

真空管ソケットの 19mm やトランスの 26mm は予めドリルで 3.2mm の下穴を開けておいてホールソーを使う。1.5mm厚のアルミだと一発で開く。

しかしホールソーだと位置の精度が出ないので端子などは現物合わせで位置を決める。

電源トランスや電源スイッチ、IECソケットなどの四角い穴はジグソーを使う。

塗装前に部品が載るか確認する。

奥澤O-2 は側板がスポット溶接のため隙間があるのでエポキシパテで埋める。パテは固まればカッターナイフやヤスリで削ることができる。アルミは地肌のまま塗装すると塗装が剥げてしまうので全体を #1,000 くらいの耐水ペーパーで削って表面に傷をつける。

アルミ用(非鉄金属用)プライマーで下地を作り、アクリルスプレー(アサヒペン、クリエイティブカラースプレー)で塗装。垂れないギリギリまで厚めに塗る。

塗装後に部品の配置を再確認。

L字アングルは現物あわせで加工する。

館山の地で教えを請い、RIAA回路の定数をまた変えた。L の後に入れた 3KΩ はそのまま、現回路の 3KΩ を 10KΩ へ、10KΩ を 100KΩ とした。これでだいぶ音が前に出てくるようになった。

定数を変える前後で周波数特性を測定した。測定は回路全体を測っており、結果は RIAAカーブで補正してある。青がオリジナルに近い定数、赤が新しい定数。

オリジナルだと 100Hz~1KHz で山があるのに対して、1KHz~10kHz は谷になる。定数を変えると方向性はほぼ同じまま、山も谷も浅くなる。音を聴いてもこちらのほうが素直に聴こえる。

回路が違うことを明かさずオーディオの手練に聴いてもらった。現回路を「古い音」、新回路を「現代的な音」と評された。まさにそうだと思う。

なんちゃって佐久間式プリアンプ、オリジナルと大きく違うところがある。RIAAイコライザ段のチョーク、オリジナルではタムラ製作所の可変インダクタVLシリーズか佐久間式用特注インダクタ、VL-SS が使われている。なんちゃってアンプではコストとスペースを考えて VL-SS を使ってない。

佐久間ススム氏も高価な(2015年現在、1個8万円以上する)VL-SS の代わりに汎用チョーク、TAMURA A-4004 の並列繋ぎ 2.5H が使えないか、と試されたこともあるが結果は散々だったようですぐに VL-SS に戻してる。VL-SS無しで組む方法はないものか考えた。

前述の「手持ちの 3H のチョーク」がコレで春日無線変圧器の整流用チョーク、54B150MA で 3H、DCR = 54Ω というスペックが公開されている。カバーがないので内蔵して使うタイプで、その代わり 1個2,300円くらいととても安い。カバー付きの同等品は無いが KAC-210 が 2H、DCR = 97Ω なので使えると思う。こちらはカバー付きでさらに安い 1個1,800円で手に入る。

可変インダクタVLシリーズと違い整流用チョークは 100Hz以上の信号が流れることを想定していない。直流以外はなるべく流したくないという整流用チョークの用途を考えると周波数の高い信号は流すべきでは無い。しかしこのままでは RIAAイコライザ段で使うのに都合が悪いのでインピーダンスを整えるために抵抗を並列にする。実機の音を聴きながら定数を変えていき、本機の場合は 100KΩ あたりがちょうどよかった。この調整用抵抗器の定数は使うチョークとアンプの回路によって異なると思う。

VL-SS を使った場合の周波数特性も測ってみた。青が VL-SS の 08タップ、赤が VL-SS の 09タップ、参考としてオレンジが 54B150MA、緑が 54B150MA + イコライザ回路変更も載せてある。


シャシー左側に電源部、信号は前から後ろへ流れる形。

シャシー内部の電源部。左が後ろ側になる。整流管を通った電流はチューブラ型の電解コンデンサとチョークへ。出力管は最大プレート電圧が低いので 4.7KΩ(5W)//4.7KΩ(5W) で電圧を降下させる。ラグ板の下に 20W のセメント抵抗器を入れると固定されて落ちてこない。

シャシー内部の信号部。左が前で信号は左下から右上へ流れる。ソケットのボルトに絶縁スペーサを共締めし、ラグ板と内蔵チョークを取り付ける。MT管なので配線が混みあう。チョークは高域のダンピングのために並列に抵抗を取り付けてある。音量調整用ボリュームは出力側に付けるため延長シャフトを使う。

ヒーター直流点火用の回路。6.3Vac を SBD でブリッジ整流し、セメント抵抗で降圧、電解コンデンサを通して 6.3Vdc を得る。片チャンネルごと独立して設ける。

入出力端子は NEUTRIK の NF2D を使う。初段は ECC82(12AU7)、出力段は 6S45P。

脚は t=3.0mm のアルミニウムを三角形に切り出してそこへボルトで装着する。

回路図(暫定)


部品表(暫定)

前面はカートリッジからの入力と音量調節ツマミ


後部は電源入力とヒューズのみ

入力トランスで昇圧された信号は初段ECC82へ

整流は双極傍熱二極管、GZ32(5V4G)、もしくは GZ34(5AR4)が使える

ヒーターを DC点火しているため部品点数が多い

(続く)